
- この記事の監修者
- 医療法人「建昇会」理事長。歯科医師。愛知学院大学歯学部卒業、日本成人矯正歯科学会会員、日本矯正歯科学会会員、UCLAカリフォルニア大学ロサンゼルス校歯科矯正科修了。
矯正すると歯の寿命が短くなる?|歯並びを整えるメリットとリスクを解説🦷
2026年09月14日
「矯正すると歯の寿命が短くなるって本当?」
「健康な歯を動かして大丈夫なの?」
「矯正したことで、将来歯が弱くなったりしない?」
矯正治療を検討している方の中には、このような不安を感じている方もいるかもしれません😵💫
歯列矯正は、今ある歯を少しずつ動かして歯並びや噛み合わせを整えていく治療です。
そのため、
「せっかく健康に生えている歯を動かしたら、歯に悪いのでは?」
と思われることがあります。
しかし、矯正治療は単に「見た目をきれいにするためだけ」の治療ではありません。
歯並びや噛み合わせを整え、毎日の歯磨きやお口の管理をしやすい状態を目指すことも、矯正治療の大切な目的です。
適切な診断・治療計画のもとで行われた矯正治療によって、必ず歯の寿命が短くなるということではありません👨⚕️
むしろ、歯が重なって磨きにくい場所を減らしたり、噛み合わせを整えたりすることで、
将来にわたって自分の歯を管理しやすい口腔環境をつくることにつながる場合があります😊
今回は「矯正すると歯の寿命が短くなる?」という疑問について、矯正治療のメリットと知っておきたいリスクの両方から解説します。
矯正治療は「歯を弱くする治療」ではありません
まず知っていただきたいのは、
「歯を動かす=歯を弱くする」ではない
ということです。
矯正治療では、歯に適切な力を加えることで、歯の周囲にある歯根膜や歯槽骨に変化を起こして歯を移動させます🦴
歯が進む方向では骨が吸収され、その反対側では新しい骨がつくられます。
これを骨のリモデリングといいます。

つまり、歯を力任せに押しているのではなく、
私たちの体がもともと持っている骨の吸収と添加の仕組みを利用して、少しずつ歯を移動させているのです🦷
治療中に歯が少しグラグラするように感じることがありますが、これも歯の周囲の組織が変化している途中にみられることがあります。
「グラグラする=歯が弱くなっている」とは限りません。
歯並びを整えることは「歯を守りやすい環境」をつくることにもつながります✨
矯正治療のメリットは、見た目がきれいになることだけではありません。
長期的なお口の健康を考えたときにも、歯並びを整えることにはメリットがあります。
●歯磨きしやすくなる
例えば、歯が重なっている叢生(ガタガタの歯並び)では、歯ブラシが届きにくい場所ができやすくなります🙅♀️
歯と歯が複雑に重なっていると、フロスを通すことが難しい場合もあります。
歯並びを整えることで、歯ブラシやフロスを使いやすい環境になることがあります。
もちろん、歯並びがきれいになれば自動的に虫歯や歯周病にならなくなるわけではありません。
しかし、毎日のセルフケアを続けやすい状態をつくることは、将来的に自分の歯を守っていくうえで大切なポイントです🪥

●噛み合わせを整えることも大切
矯正治療では、前歯をきれいに並べることだけを考えているわけではありません。
上下の歯がどのように噛み合っているかも確認しながら治療を進めます👀
噛み合わせに問題がある場合、一部の歯だけに強い力がかかっていることがあります。
矯正治療では、歯並びとともに噛み合わせを整え、できるだけバランスよく噛める状態を目指します🦷
歯を長く使っていくためには、見た目だけではなく「どの歯にどのような力が加わっているのか」という視点も重要です。
●歯並びが整うと、お口の変化にも気づきやすくなる
歯が複雑に重なっていると、
「どこから出血しているのか分からない」
「歯と歯の間が見えにくい」
「フロスを通せない場所がある」
といったこともあります😱
歯並びが整うことで、自分自身でも歯や歯ぐきの状態を確認しやすくなる場合があります。
矯正治療は、治療が終わった瞬間だけきれいにするのではなく
その後も自分のお口を管理しやすい環境をつくることにつながる治療と考えることができます😊
では、なぜ「矯正すると歯の寿命が短くなる」と言われるの?
ここまで読むと、
「それなら、なぜ矯正すると歯が悪くなるという話があるの?」
と思うかもしれません。
矯正治療にも、ほかの歯科治療と同じようにリスクや注意点があります。
代表的なものの一つが歯根吸収です。
●矯正治療で「歯根吸収」が起こることがあります

歯根吸収とは、矯正治療で歯を動かす過程で、歯の根の先端などが治療前より短くなることがある現象です。
矯正治療に伴う歯根吸収は以前から研究されており、その程度には個人差があります
歯の動かし方や移動量、治療期間、歯根の形など、さまざまな要因が関係すると考えられています。
ただし、
「矯正したら歯根吸収が起こる=歯が抜ける」
ということではありません。
軽度の歯根吸収がみられることはありますが、すぐに歯の機能に大きな問題が生じるとは限りません。
だからこそ矯正治療では、治療前に歯根や歯槽骨の状態を確認し、必要に応じて治療中も経過を確認しながら進めていきます📝
●歯周病がある方こそ「歯を支える骨」の確認が重要

歯の寿命を考えるときには、歯そのものだけではなく、歯を支えている歯槽骨や歯ぐきも重要です🦴
歯周病が進行すると、歯を支えている骨が減少し、歯がグラグラする原因になります。
そのため成人矯正では、
歯並びだけを見るのではなく、歯根・歯ぐき・歯槽骨まで確認することが重要です⚡
歯周病がある場合には必要な治療や管理を行いながら、歯周組織の状態に合わせて矯正治療を進めていきます。
「きれいに並べること」だけではなく、その歯を支えている組織も含めて考えることが大切なのです。
インビザラインも「歯を守りながら動かす」という考え方は同じ

インビザライン マウスピース 形状 カッティングライン
インビザラインなどのマウスピース矯正でも、歯が動く基本的な仕組みはワイヤー矯正と同じです🙆♀️
歯根膜と歯槽骨のリモデリングを利用して、少しずつ歯を移動させます。
マウスピース矯正の大きな特徴の一つは、装置を取り外して普段どおり歯磨きやフロスができることです✨
矯正治療は数か月から数年続くため、治療期間中の口腔衛生管理は非常に重要です。
マウスピースを外して歯磨きできることは、清掃性という点では大きなメリットがあります。
ただし、マウスピースを装着したまま糖分を含む飲み物を飲んだり、歯を磨かずに装着したりすれば、虫歯のリスクにつながります。
装置を選ぶことだけではなく、治療中にきちんと歯を管理することも、将来の歯を守るためには大切です。
抜歯矯正=残った歯に悪い、ではありません
「健康な歯を抜いて矯正すると、残った歯の寿命が短くなるのでは?」
と心配される方もいます。
しかし、
「抜歯矯正=歯に悪い」
「非抜歯矯正=歯に優しい」
と単純に分けることはできません。
歯が並ぶスペース、顎の大きさ、前歯の位置、歯の傾き、噛み合わせ、
口元、横顔、歯槽骨などを総合的に分析したうえで、治療方針を考える必要があります📝
無理に非抜歯にすることが必ずしも歯にとって良いとは限りませんし、反対に抜歯が必要とは限りません。
その方のお口の状態に合った治療計画を選択することが重要です。
大切なのは「どこまで安全に歯を動かせるか」🔍
矯正治療では、
「できるだけ口元を下げたい」
「前歯をもっと後ろに動かしたい」
「できるだけ早く治療を終わらせたい」
という希望だけで歯を動かすわけではありません。
歯は歯槽骨の中で動かしていくため、歯根や骨の状態を確認しながら、どこまで動かすのかを計画することが重要です👨⚕️
そのため治療前には、
・顔貌写真
・口腔内写真
・口腔内スキャン
・CT
などを用いて、歯並びだけではなく、歯根・骨格・歯槽骨・噛み合わせなどを確認します。
矯正治療で大切なのは、
「とにかく歯を動かすこと」ではなく、「歯や周囲の組織を確認しながら、適切な位置へ動かすこと」なのです。
矯正治療を「将来の歯を考えるきっかけ」に😊
矯正治療を始めると、これまで以上に自分の歯を見る機会が増えます。
歯磨きの仕方を見直したり、フロスを使うようになったり、定期的に歯科医院で口の中を確認してもらったりする方も多くいらっしゃいます。
矯正治療は歯並びをきれいにするだけではなく、自分の歯を長く大切にしていくために、口腔環境を見直すきっかけにもなります。
治療後も、
毎日の歯磨き・フロス
定期的な歯科検診
歯周病の管理
リテーナーによる保定
を続けていくことが大切です✨
まとめ|矯正は「将来も歯を管理しやすい環境」を目指す治療です🦷
「矯正すると歯の寿命が短くなるのでは?」
と心配される方もいますが、適切に診断・管理された矯正治療を受けたからといって、必ず歯の寿命が短くなるわけではありません。
矯正治療によって歯並びや噛み合わせを整えることで、
歯磨きやフロスがしやすくなる
歯が重なった部分を清掃しやすくなる
噛み合わせのバランスを整える
自分の歯や歯ぐきの状態を管理しやすくなる
といったメリットが期待できます。
一方で、歯根吸収や歯肉退縮など、矯正治療に伴うリスクがゼロというわけではありません。
だからこそ、
治療前にしっかり検査すること
歯根や歯槽骨を考えて治療計画を立てること
治療中も定期的に状態を確認すること
毎日の口腔ケアを続けること
が重要です。
矯正治療は、単に「歯を動かして見た目をきれいにする治療」ではありません。
きれいな歯並びと噛み合わせをつくり、その後も自分の歯を管理しやすいお口の環境を目指す治療でもあります😊
「歯並びを治したいけれど、将来の歯への影響が心配」という方は、その不安もカウンセリングでぜひご相談ください。
見た目だけではなく、これから先も自分の歯を大切に使っていくことまで考えた矯正治療を選ぶことが大切です。
参考文献📚
- Yassir YA, McIntyre GT, Bearn DR. Orthodontic treatment and root resorption: an overview of systematic reviews. European Journal of Orthodontics. 2021;43(4):442-456.
- Weltman B, Vig KWL, Fields HW, Shanker S, Kaizar EE. Root resorption associated with orthodontic tooth movement: a systematic review. American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics. 2010;137(4):462-476.
- Bollen AM, Cunha-Cruz J, Bakko DW, Huang GJ, Hujoel PP. The effects of orthodontic therapy on periodontal health: a systematic review of controlled evidence. Journal of the American Dental Association. 2008;139(4):413-422.
- Crego-Ruiz M, Jorba-García A. Assessment of the periodontal health status and gingival recession during orthodontic treatment with clear aligners and fixed appliances: A systematic review and meta-analysis. Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 2023;28(4).
- Elhaddaoui R, Qoraich HS, Bahije L, Zaoui F. Orthodontic aligners and root resorption: A systematic review. International Orthodontics. 2017;15(1):1-12.









