
- この記事の監修者
- 医療法人「建昇会」理事長。歯科医師。愛知学院大学歯学部卒業、日本成人矯正歯科学会会員、日本矯正歯科学会会員、UCLAカリフォルニア大学ロサンゼルス校歯科矯正科修了。
【口唇癖とは?】唇を噛む・吸うクセが歯並びや矯正治療に与える影響を歯科医師が解説
2026年07月24日
「気づくと下唇を噛んでいる。」
「無意識に唇を吸ってしまう。」
「集中していると唇を口の中へ巻き込んでいる。」
このようなクセに心当たりはありませんか?
このような口唇癖(こうしんへき)は、一見すると何気ないクセのように思われがちですが、実は歯並びや噛み合わせに大きく関係しています。
さらに、矯正治療中に口唇癖が残っていると、歯が計画どおりに動きにくくなったり、治療期間が延びたり、治療後の後戻りにつながることもあります。
歯並びをきれいに整えるためには、歯だけを見るのではなく、歯並びに影響を与える習癖(クセ)にも目を向けることが大切です。
今回は、口唇癖が歯並びや矯正治療へ与える影響、改善方法について詳しく解説します。
口唇癖とは?

口唇癖とは、唇を噛む・吸う・巻き込む・舐めるなど、無意識に繰り返してしまうクセのことです👀
代表的なものには、
- 下唇を噛む
- 上唇を噛む
- 唇を吸う
- 唇を口の中へ巻き込む
- 唇を舌で押す
などがあります。
本人は無意識で行っていることがほとんどですが、このようなクセは毎日何時間も続くことがあります✔
歯は「強い力」よりも「弱い力が長時間加わること」で動きやすいという特徴があります。
実際に矯正治療も、強い力ではなく弱い力を持続的に加えることで歯を動かしています。
そのため、口唇癖による力も、長期間続けば歯並びに影響を及ぼす可能性があるのです😞
歯並びは力のバランスで決まっています
歯は顎の骨に直接固定されているわけではなく、「歯根膜」というクッションのような組織によって支えられています。
歯並びは、
- 舌が内側から押す力
- 唇が外側から押す力
- 頬の筋肉から加わる力
これらのバランスによって保たれています。
このバランスが崩れると、歯は少しずつ位置を変えてしまいます。
例えば、下唇を前歯の裏側へ巻き込むクセがある場合、上の前歯は前方へ押され、下の前歯は内側へ押し込まれる力が加わります。
これが毎日続くことで、少しずつ歯並びが変化してしまうのです。
口唇癖によって起こりやすい歯並び


口唇癖が続くことで起こりやすい歯並びには、次のようなものがあります。
- 出っ歯(上顎前突)
- 前歯の傾きの変化
- 噛み合わせのズレ
- 前歯が閉じにくくなる
- 矯正後の後戻り
特に多いのが、下唇を噛むクセによる出っ歯です。
下唇を前歯の裏側へ巻き込むことで、上の前歯は前方へ押され、下の前歯は内側へ押されます。
その状態が何年も続くことで、前歯が徐々に前へ傾き、横顔の印象まで変わってしまうことがあります。
また、口唇癖のある方では、口呼吸や舌が低い位置にある「低位舌」、お口ポカンなどを伴っていることも少なくありません👨⚕️
こうした複数の習癖が重なることで、歯並びへの影響はさらに大きくなる可能性があります。
子どもの口唇癖は特に注意
成長期のお子さまでは、歯だけでなく顎の骨も発育途中です。
そのため、大人よりも口唇癖の影響を受けやすく、歯並びだけでなく顎の成長方向まで変化してしまうことがあります🦴
出っ歯や開咬(前歯が噛み合わない状態)、噛み合わせのズレにつながることもあるため、できるだけ早い段階で改善を目指すことが大切です。
口唇癖は矯正治療にも影響します
口唇癖は歯並びを悪くするだけではありません。
矯正治療そのものにも影響を与える可能性があります😢
矯正治療では、歯に適切な力を加えながら計画どおりの位置へ少しずつ歯を動かしていきます。
しかし、口唇癖によって毎日反対方向の力が加わると、歯の移動効率が低下し、予定どおりに歯が動かなくなることがあります。
例えば、下唇を噛むクセがある方では、本来後ろへ下げたい上の前歯に前方への力が繰り返しかかるため、
歯の移動がスムーズに進まない場合があります。
その結果、
- 治療期間が長くなる
- 歯の動きに左右差が出る
- 理想的な歯並びへ仕上がりにくくなる
といった影響が生じる可能性があります。
特にマウスピース矯正では、歯が計画どおりに動かなければマウスピースが歯へしっかり適合せず、
「マウスピースが浮く」「最後まで入り切らない」といった状態になることがあります。
その場合、追加の口腔内スキャン(再スキャン)を行い、新しいマウスピースを作製して治療計画を修正する「リファイメント」が必要になるケースもあります。
ワイヤー矯正でも同様に、歯へ余計な力が加わり続けることで治療効率が低下し、予定より治療期間が延びる可能性があります🤦♂️
また、矯正治療が終わったあとも口唇癖が残っていると、整えた歯並びへ継続的に力が加わるため、後戻りの原因になることもあります。

もちろん、口唇癖だけで治療結果が決まるわけではありません。
しかし、歯並びを悪くした原因となる習癖を改善することは、矯正治療を成功へ導き、
美しい歯並びを長く維持するために欠かせないポイントです。
なぜ口唇癖は起こるの?
口唇癖は意識的に行っていることは少なく、多くは無意識です。
仕事や勉強に集中しているとき、スマートフォンを見ているとき、ストレスを感じているときなどに現れやすい傾向があります。
また、
- 口呼吸
- 鼻づまり
- お口ポカン
- 舌の位置が低い
- 唇を閉じる筋力の低下
などが原因となっていることもあります。
そのため、「クセをやめよう」と意識するだけでは改善しにくいケースも少なくありません👨⚕️
改善方法

改善の第一歩は、自分に口唇癖があることを知ることです。
そのうえで、安静時には「唇は軽く閉じる」「歯は接触させない」「舌は上あごのスポットにつける」という正しい口腔姿勢を意識することが大切です。
必要に応じて、MFT(口腔筋機能療法)を取り入れることで、舌や唇の筋肉を正しく使えるようになり、クセの改善につながります✨
当院では口腔習癖も確認しています
矯正治療では、歯を動かす技術だけでなく、その歯並びを長く維持することも重要です。
そのため当院では、歯並びだけではなく、舌の位置や飲み込み方、口呼吸、口唇癖などの口腔習癖も確認し、
必要に応じてMFT(口腔筋機能療法)をご提案しています。
歯並びを悪くした原因まで改善することで、より安定した治療結果につながると考えています🙌
まとめ
口唇癖は「ただのクセ」と思われがちですが、毎日繰り返されることで歯並びや噛み合わせに影響を与えることがあります。
さらに、矯正治療中に口唇癖が残っていると、歯が計画どおりに動きにくくなったり、
再スキャンやリファイメントが必要になったり、治療後の後戻りにつながる可能性もあります。
歯並びを美しく整え、その状態を長く維持するためには、歯を動かす治療だけでなく、
口唇癖や舌癖、口呼吸などの口腔習癖を改善することも大切です。
「下唇を噛むクセがある」「唇を吸うクセがやめられない」「矯正後の後戻りが心配」という方は、お気軽にご相談ください。
歯並びだけでなく、お口全体の機能を整えることで、より良い治療結果につながります。
参考文献
- Proffit WR, Fields HW, Larson BE, Sarver DM. Contemporary Orthodontics. 6th ed. Elsevier; 2019.
- Graber LW, Vanarsdall RL, Vig KWL, Huang GJ. Orthodontics: Current Principles and Techniques. 7th ed. Elsevier; 2023.
- 日本矯正歯科学会. 歯科矯正治療に関する資料・ガイドライン.
- 日本口腔筋機能療法(MFT)学会. 口腔筋機能療法に関する資料.









